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会計処理-リース会計⑥連結上のリース会計 [会計処理-リース取引]

連結決算でのリース取引の取り扱い


(1) ファイナンス・リース取引の判定(現在価値基準)(適用指針第18項)

 ファイナンス・リース取引の判定を現在価値基準で行うに当たっては、必要に応じて親会社のリース料総額および連結子会社のリース料総額を合算した金額に基づき判定を行います(重要性がない場合を除く)。例えば、子会社のリース契約に親会社が残価保証するようなケースについては、子会社の個別決算上の判定と連結上の判定が異なることが考えられます。

(2) 重要性の判定(適用指針第33項)

 借手の所有権移転外ファイナンス・リース取引については、リース資産総額に重要性が乏しい場合には、利息相当額の調整において簡便的な方法が認められていますが(第2回5(4)参照)、連結財務諸表においては、この重要性の判定を連結財務諸表の数値を基礎として見直すことができます。

 従って、親会社では重要性がなく簡便的な方法を、子会社では重要性があるため原則的な方法を採用している場合、連結財務諸表の数値で見直した結果、連結全体として重要性がない場合には、子会社分についても連結上調整を行うことで簡便的な方法を用いることができます。

(3) 連結会社間でリース取引を行う場合の留意点

 「連結財務諸表におけるリース取引の会計処理及び開示に関する実務指針」が平成20年3月25日に改正されていますが、以下①②については従来の趣旨から大きな変更はありません。
  ①借手の資産計上額と貸手の購入価額が相違する場合、連結会社間で利息相当額の取扱いが異なる場合
→ 連結上は原則として貸手の購入価額(外部調達価額)により固定資産計上し、減価償却を行う(借手の資産計上額と貸手の購入価額の差額に重要性が乏しい場合を除く)。
  ②会計基準適用初年度開始前のファイナンス・リース取引について、借手・貸手ともに賃貸借処理を行う場合
→ 連結上は、貸手のリース資産を自社用資産に振り替えるとともに、両者の注記金額から当該取引分を控除する。
  ③販売益が生じている物件を第三者にリースした場合(貸手)
→ 例えば親会社が子会社に製品を販売し、子会社が第三者に当該製品をリースした場合、親会社で計上される製品の売却益が、

 連結上はリース物件の販売益(リース適用指針第56項)として取り扱われることとなる(販売益に重要性が乏しい場合を除く)。



財務諸表上の注記


 リース取引の注記として必要な項目は以下のとおりです。
 ファイナンス・リース取引の借手側は、その主な内容(主な資産の種類等)および減価償却の方法を注記しますが、重要性が乏しい場合(適用指針第32項と同様)には注記不要です。
オペレーティング・リース取引については、従来と同様の注記を行います。
 20171201リース会計.jpg

適用初年度開始前の所有権移転外ファイナンス・リース取引の取扱い
 (四半期財務諸表における取扱いを含む)

 適用初年度開始前の所有権移転外ファイナンス・リース取引については、借手、貸手それぞれ以下のとおり、原則的にはリース会計基準等に定める方法により会計処理することになります。
 20171201リース会計2.jpg

 (注1)ただし、賃貸借処理を適用するリース取引に係る金額が企業再編等により前年度末と比較して著しく増減しているときは、当該著しく増減した期における四半期財務諸表において、以下を注記する(適用指針第84、85項)
(借手)
著しく増加した場合:著しく増加したリース取引に係る未経過リース料期末残高相当額
著しく減少した場合:著しく減少したリース取引に係る前年度末の未経過リース料期末残高相当額

(貸手)
著しく増加した場合:著しく増加したリース取引に係るリース物件の期末残高及び未経過リース料期末残高相当額
著しく減少した場合:著しく減少したリース取引に係る前年度末のリース物件の期末残高及び未経過リース料期末残高相当額



税務の扱い


 法人税については、リース会計基準の改正に対応して税務の取扱いが変更された結果、3月期決算会社については法人税上の税務調整は原則不要と考えられます(3月期決算会社以外については適用開始時期の相違による影響がありますので(2)をご参照ください)。消費税については、会計上、少額・短期のファイナンス・リース取引について賃貸借処理を行う場合、リース開始時に一括して仕入控除税額の計算を行うのが原則ですが、課税期間ごとの分割控除も認められている点に留意が必要です。

 (1) 会計と税務の異同について

 以下、リースの借手側について会計と税務の異同をまとめています(○:一致、△:一部不一致、×:不一致)。
 20171201リース会計3.jpg

 ※1所有権移転外ファイナンス・リース取引について、会計上利息相当額を控除しても(利息法、定額法)、控除しなくても、原則として調整不要。
 ※2消費税上は、利息相当額が契約上明示されていない場合、リース料総額を課税仕入として仕入税額控除されるため、会計上利息相当額を控除する場合に相違が生じる。
 ※3仕入税額控除をするためには、リース開始時に一括して仮払消費税等を債務計上することが原則である。他方、賃借人が賃借処理を行っている場合には、賃借処理に応じた取扱いが認められており、この場合には課税期間ごとの分割控除も認められる。
 ※4ファイナンス・リース取引の判定基準について、会計と税務とで若干の相違がある(会計上はフルペイアウトを判定するのに現在価値基準を用いるが、税務上は現在価値ではなくリース料総額を用いる)。



ファイナンス・リースの判定等、文書化の重要性


 従来の基準においても、ファイナンス・リース取引か否かの判定や、利息法によるべきかどうかなどの重要性判定は必要とされていましたが、J-SOXが適用されることにより、従来に増して、これらの検討が適切になされていることを文書化し、事後的に説明できるようにしておくことが重要になっています。また、選択可能な処理については、どのような方法を選択するのか検討を行い、文書化しておく必要があります。具体的には、以下のような項目が挙げられます。

 ① リース取引ごとの文書化

 ファイナンス・リース取引の判定(現在価値基準、経済的耐用年数基準)の検討過程

 維持管理費用相当額、残価保証の有無と取扱い
 割引率の選定根拠
 所有権移転外か否かの判定

 ② リース取引全体に係る会計処理

 リース資産総額に重要性が乏しいか否かの文書化
 個々のリース資産に重要性が乏しい場合の会計処理方針


 (1) 減価償却計算

 従来の賃貸借取引から、リース資産を減価償却する仕組みになるわけですが、減価償却計算を行う仕組みを構築する必要があります。減価償却計算は年度末に行うだけでなく、四半期決算においても、計算することが必要な点にも注意したいです。

 四半期決算における減価償却費は、年度決算と異なり、合理的な予算制度を利用することが可能とされています。この簡便的な処理とは、年度の予算を策定している場合には、当該予算に基づく年間償却予定額を期間按分(あんぶん)する方法により、四半期会計期間または期首からの累計期間の減価償却費として計上することができるというものです。

 いずれにしても、減価償却計算は、年度決算と四半期決算の財務報告手続きの一つとして、位置づけられることになります。下記、(3)に示すような台帳を作成して、減価償却計算を行うのも対応の一つだと思います。

 (2) リース資産の管理・保全

 従来は所有権移転外ファイナンス・リース取引について、賃貸借処理を選択するケースが一般的だったため、注記の開示が必要な決算のタイミングで、その都度リース会社から情報を収集していたケースが多かったと思います。リース資産台帳なるものが存在したかもしれませんが、実態は注記に対応した、リース契約台帳に近いものだったのではないでしょうか。
 この点、リース資産について(2)の減価償却計算を行うこと以外に、資産の保全という観点から、リース資産台帳を作成し、実物の存在を確認することも考慮しておきたい事項です。




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リース取引の区分 [会計処理-リース取引]

リース取引の区分

 リース取引は、ファイナンス・リース取引とオペレーティング・リース取引に区分されます。企業会計上、このいずれのリース取引に該当するかによって、会計処理の取扱いが異なるため、この区分は重要です。

 ファイナンス・リース取引の定義は、①解約不能および②フルペイアウトのいずれも満たすリース取引です(リース適用指針5項)。①解約不能とは、法形式上解約できないリース取引だけでなく、事実上解約不能(例えば、法的形式上は解約可能であっても、解約時に相当の違約金を支払わなければならないなど、事実上解約不能である場合)のリース取引を含みます。②フルペイアウトとは、借手が物件を所有することにより得られるのと同様に、ほとんど全ての経済的利益を享受すること、および借手が物件を使用するに伴って生じるのと同様に、ほとんど全てのコストを負担することを言います。要は、リース資産を使用しているが、自社で所有している場合と同様の効果および費用が生じているものとみなされる場合をフルペイアウトと言います。


 具体的な判定要件

 企業会計上、リース取引がファイナンス・リース取引に該当するかどうかについては、上記の要件を満たす必要があり、その経済的実質に基づいて判断すべきですが、次の①現在価値基準または②経済的耐用年数基準のいずれかに該当する場合には、ファイナンス・リース取引と判定されます(リース適用指針9項)。


 現在価値基準と経済的耐用年数基準

1. ①解約不能のリース期間中のリース料総額の現在価値が、当該リース物件の借手の見積現金購入価額のおおむね90%以上であること(現在価値基準)
2. ②解約不能のリース期間が、当該リース物件の経済的耐用年数のおおむね75%以上であること(経済的耐用年数基準)

 一方、税務上は、中途解約不能かつフルペイアウトのものをリース取引と定義しており、リース取引については売買があったものとして所得計算を行うべきものとされています。また、税務上のフルペイアウトに係る規定ですが、資産の賃貸借につき、その賃貸借期間(当該資産の賃貸借に係る契約の解除をすることができないものとされている期間に限る)において賃借人が支払う賃借料の金額の合計額が、その資産の取得のために通常要する価額のおおむね90%に相当する金額を超える場合には、当該資産の賃貸借は、「資産の使用に伴って生ずる費用を実質的に負担すべきこととされているもの」に該当すると規定されています(法令131条の2第2項)。

 言い換えれば、解約不能のリース期間に係るリース料総額が、その資産の取得のために通常要する価額のおおむね90%相当額を超えている場合に、フルペイアウトに該当するものとして判断されます。この内容は、リース適用指針の内容と少し異なります。つまり、リース適用指針においては、「リース料総額の現在価値」が、見積現金購入価額のおおむね90%以上であるかどうかを判定する内容であるのに対して、税法は現在価値に割り引かない「リース料総額」がその資産の取得のために通常要する価額(借手が購入価額を知り得ないときは、実質的に見積現金購入価額と同義であると考えられます)のおおむね90%相当額を超えているかどうかで判定する内容です。ただし、両者の判定結果が異なるケースは限定的かと思わいます。

会 計
 リース料総額の現在価値 ≧ 見積現金購入価額×90%

税 法
 リース料総額 > その資産の取得のために通常要する価額×90%


貸手と借手の判定が異なる場合

 貸手はリース物件の購入価額を把握していますので、その実際の購入価額に基づいてフルペイアウトかどうかの判定を行います。
 一方、借手は貸手の購入価額を知り得ない場合が多く※1 、その場合は見積現金購入価額で判定することになります。貸手における実際の購入価額と見積現金購入価額は一致しないことが多いと考えられるため、貸手と借手のフルペイアウトの判定結果が異なることはあり得ます。例えば、貸手はオペレーティング・リース取引と判定しているにもかかわらず、借手はファイナンス・リース取引と判定するようなケースです。それは、ルール上やむを得ず、判定方法の内容が適切である限り、そのことが問題となることは通常ないと考えられます。
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